手術の翌日

ICUの中に時計はあるんだけどコンタクトとかしていないので見えない。だから時間を知りたいときは看護婦に聞かなきゃいけない。

今何時?
あぁ、まだ5時半なのね。。。

治療というのは医者がオーダーを出さないとなにも進まないから医者が出勤してくる9時頃まではひたすらよこになって耐えるしかない。

そういや、左足なくなったんだよね。取り返しつかないことしたなあ。

なんて随分今更なこと考えているうちにやっと医者出勤。医者が様子を見て大丈夫そうだと、心電図の測定するラインをはずしたり、血圧を数分おきに測る機械をはずしたりしてくれる。この自動血圧測定機は、うるさい音を立てて腕を締め付けるので、せっかく寝ついても簡単に起こしてくれる憎いやつだ。心電図を測るラインも線がいっぱいあって動けないしはずれると警告音がうるさいし看護婦が見に来るし邪魔。とりあえずこの2つくらいははずして欲しい。
こうして、体からチューブが段々はずれていくっていうのは快方に向かいつつあるということ。体からすべてのチューブが抜けるまで我慢我慢。

手術が終わり、おならがでると食事がでるようになる。おならがでるのは、腸が動いているからであり、だからこそご飯を食べられる。なので、手術の先輩である母はおならがでたら高らかに看護婦に宣言をしろとよくいってたもんだ。

が、レペタンで予想以上に丼ギマリのせいか今回はどうにもおならがでそうにない。ご飯食べられるの相当先かな、とおもっていたら医者が腹に聴診器あてて「夕方からでいいでしょう」だと。
お母さん、僕は昔、わざわざナースコールまでおしえて「おならでました!!!!」っていったんですよ。

で、今何時? 午後2時だそうだ。

親と姉がきてた気がする。正直、こういう状態の時、家族にきてもらってもなすすべがない。患者は痛み止めで可能な限り眠っていたい。家族がくると「よくがんばったねえ」だとかなんだとかいわれてなかなか眠れない。気持ちはわかるけど。姉ちゃんも手なんか握らないでくれー おれはただひたらすら痛みが引くまで眠り続けたいんだよぉぉぉぅぅぅぅ

今何時? 午後6時 夕飯の時間。

術後の最初の食事は、流動食。なかみは、おかゆの上澄みとみそ汁の上澄みと何かの上澄み(全部同じ味)。それとヤクルト(小1個)。
 
 ヤ ク ル ト ち ょ ー や べ ー

いやーヤクルト飲んだ瞬間は、延々続くディープミニマルの中にいきなりNirvanaLithiumカットインしたような多幸感でした。一気にあがりました。

ICUは手術が何件もあるみたいで、患者がでたりはいったり。ただ、ここは救急車が重症人をつれてくるようなところではないんで、ICUでばたばた人が死んでいくなんて場面には遭遇しなかった。たまたまかもしれないけど。

どうやら今晩もここで過ごすことになりそう。血圧測る機械が時折起こしてくれる。

自慢じゃないけど、別にこんな体験はじめてじゃない。もう10回以上繰り返している。そのたびに、この手術で最後になれば、と願いそして裏切られ続けてきた。
でも、今度こそ本当に最後でしょ。もう左足がないんだから。すごくすっきりしたよ。